2024年9月
札幌駅に、ザックを背負って集合する。
その中には、1泊2日の川旅に必要なギアが全部入っている。パックラフト、パドル、PFD、ヘルメット、ドライスーツ、テントは不要。今夜の宿は都心にある。
これまでの常識では、考えられなかった光景かもしれない。
メンバー紹介 ― それぞれのホームリバーを持つ3人
今回のトリップに集まったのは、それぞれ北海道に確固たるホームリバーを持つ3人。
せいしゅうさん(南富良野在住)― シーソラプチ川をホームリバーとするリバーガイド兼ビデオグラファー。前年の2023年9月には釧路川トリップをともにした仲間でもある。
國分さん(釧路川エリア)― カイパックラフティング北海道のパックラフトガイド兼フォトグラファー。2024年6月のシーソラプチ川トリップにも同行した。
そして自分。
北海道の名だたる川を知る2人のガイドとともに、あえて都市を流れる川を選んだ。「アーバンパックラフティング」という、このシリーズの集大成として。
なぜ、豊平川なのか
釧路川、シーソラプチ川と続いてきた、それぞれのホームリバーを巡るシリーズ。
3本目にして選んだのは、札幌市民の足元を流れる豊平川だった。
この川は、札幌という街そのものの成り立ちに深く関わっている。都市が川から生まれ、川を軸に広がってきた。それを知っていても、ほとんどの人は川を「見る」だけで、川の上から街を「見る」経験はしていない。
パックラフトがあれば、それができる。
川は、街を横断する別の道だ。
Day 1 ― 札幌駅から川へ
集合場所は「ウレシパモシリ北海道イランカラプテ像」前のはずが

集合場所はJR札幌駅構内、ウレシパモシリ北海道イランカラプテ像の前に設定していた。しかし像は出張中。
パッキングスタイルはというと、3者3様。それもまた、アーバンパックラフティングならではの光景だった。パドルとPFDとヘルメット、そしてなか卯。改めて朝食をとりながらミーティング。このミスマッチ感が、このトリップの序章としてちょうど良かった。

JRから地下鉄へ、プットインポイントを探す

公共交通機関を乗り継いで川へ向かう。JRからは地下鉄に乗り換えて上流へ。終点から川へのプットインポイントを探して、通勤・通学の流れを逆に遡る。
川への入り口を探す行為そのものが、すでに旅のはじまりだった。

川が浅く、支流からのプットインは難しいと判断。合流点へ向かうことにした。

プットイン前に立ち寄ったのは、1972年の札幌オリンピック主会場だった公園内のさけ科学館。豊平川の歴史を事前に学んでから川に入る。これも、札幌ならではのアプローチだと思った。

川の上から見る、いつもの街
いつも街から見ている景色を、川の上から見るというのが新鮮だった。

パックラフトがあるかないかだけの差。それだけで、見える景色が変わる。街と川の境目が、なくなる。
注意点として、都市の川なので人工物もそれなりにある。テトラポットは危険物だ。増水時には吸い寄せられるリスクがあるし、この水量でもコントロールできなければ十分に危険になる。川の上にいる以上、常に読み続けることが必要だ。
パックラフトを”駐車”して、すみれ本店へ

昼食は、豊平川沿いの名店「すみれ本店」へ。
札幌味噌ラーメンといえば、すみれ。その本店が豊平川のすぐそばにある。パックラフトを川岸にまるでパーキングに停めるように係留して、そのまま徒歩でお店へ向かった。

名店の暖簾をくぐる。川の上から街に上陸して、ラーメンを食べる。アーバンパックラフティングならではの昼食だった。
橋、橋、橋
橋をくぐるたびに、同行したメンバーの一人がつぶやいた。
「橋ごとに、住んでいた頃の思い出が蘇る」

札幌に住んだことがある人なら、一度は渡ったことのある橋ばかり。川の下からその橋を見上げるのは、生まれて初めての視点だった。
これも、アーバンパックラフティングの特徴かもしれない。
1日目のゴールは都心の山小屋へ
1日目の行程が終了。都心部での宿泊はあえてキャンプなどする必要はなく、「都会の山小屋」sappolodgeへ。

そして夕食は、豊平川からアプローチするすすきのへ。川から直接すすきのに入るという体験は、初めてのことだった。

Day 2 ― 下流へ、そして街に戻る
2日目は雨。
通勤の人たちが足早に歩く中、我々は川に向かう。都会の自然に飛び込まないと見られない情景が、そこにあった。
橋の下を流れていると、どこからか管楽器の演奏が聴こえてきた。
橋の上か、河川敷か。音の出どころを探しながら流れていくと、誰かが練習しているのが見えた。川の上でなければ、絶対に出会わない場面だった。
都会の川には、自然だけでなく、人の営みが音として流れ込んでくる。これもアーバンパックラフティングならではの体験だと思った。
雨の中を漕ぐ。流れも水質も徐々に淀んでくる。街が広がり、橋が大きくなる。交通量の多い大きな橋がゴールの目印。
休憩で立ち寄ったマクドナルドが、身体に沁みた。

帰路も公共交通機関を使ってスタート地点の札幌駅へ。完全なループが成立した。

アーバンパックラフティングという考察
何十年も住んでいるのに、利用してこなかった道(川)をあえて辿ってみる。
川を下る時には、ついトレイルや道路から川を見ることをしがちだが、考えてみるとこの街も川から発生した街であって、実は川が中心なのかもしれない。
街の成り立ちも豊平川の流れが源となっている札幌市を巡るアーバンパックラフティングは、とても印象に残るツアーとなった。
「アーバンパックラフティング」という言葉は、まだ一般的ではない。でも、この体験に出会ったとき、それ以外の言葉が思い浮かばなかった。
⚠️ 安全について ― ローヘッドダムは必ずポーテージ
都市河川に限らず、豊平川でも注意すべき人工物がある。その代表がローヘッドダムだ。(この時は、メンバーがリバーガイド+ローウォーターで完全な安全を担保して近づいています。ローウォーターでもこれだけバックウォッシュが強い)
動画のような構造物がそれにあたる。一見、穏やかな落差に見えるかもしれないが、これは非常に危険な障害物だ。
低水位であっても、バックウォッシュ(落下した水が巻き返す流れ)は強い。この時は水位が低く、経験豊富なガイドが安全を十分に確認した上で慎重に接近している状況だ。
増水時は絶対に近づいてはいけない。ましてや越えて下ろうとしてはいけない。
ローヘッドダムは世界中で多くのパドラーの命を奪ってきた構造物だ。見た目の穏やかさに反して、バックウォッシュに一度捕まると自力での脱出が極めて困難になる。
川を下る際は事前にルート情報を収集し、ローヘッドダムを含む人工障害物の位置を把握しておくこと。そして現地で確認したら、迷わずポーテージ(艇を担いで陸上を迂回)する。これは技量の問題ではなく、判断の問題だ。
このトリップで使用したギア
豊平川のような都市河川のフラットウォーター〜軽い瀬では、取り回しのよい艇が適している。今回のメンバーが使用していたのはAlpacka Raftのモデルで、公共交通機関での移動を考えると軽量かつコンパクトに収納できることが前提条件になる。
- パックラフト:Alpacka Raft各モデル(Packraft Hokkaido Web Shop)
- PFD(ライフジャケット):川では必須
- ヘルメット:都市河川の人工物対策として重要
- ドライスーツまたはウェットスーツ:9月の水温を考慮
装備の選び方については、パックラフト基本装備ガイドも参照してください。
関連トリップレポート
このトリップは、3つの川を巡るシリーズの最終章です。
- 釧路川リバートリップ1泊2日|國分さんのホームリバーへ
- シーソラプチ川パックラフティング|BCパックラフティングという旅のかたち
- シーソラプチ川トリップ(國分さん執筆)→ The Trails Mag




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